COPDの診断
スパイロ検査によるCOPDの診断
努力性肺活量測定(FVC)
COPD診断の際には、慢性の咳、たん、息切れなどの症状や危険因子に対する曝露歴、それらに加えて気流閉塞の有無を知る必要がありま す。気流閉塞とは空気の通り道である気道・気管支が狭くなり、息を素早く吐き出せなくなることをいいます。気流閉塞を調べるためには、 スパイロメータを使った肺機能検査(スパイロ検査)がかかせません。
スパイロ検査は、息を思い切りたくさん吸い込んだところから一気に勢いよく吐き出して、吐き出しの1秒間に吐いた量(1秒量)、最後ま で吐ききった時の肺活量(努力性肺活量)、そしてその肺活量で1秒量を割った計算値(1秒率)から気流閉塞の有無を判定するものです。 1秒率が70%未満の場合、COPDの可能性が考えられます。またCOPD患者における気流閉塞の重症度もこの検査結果によって分類されます。
COPDの病期分類
Ⅰ期 | 軽度の気流閉塞 | %FEV1≧80% |
Ⅱ期 | 中等度の気流閉塞 | 50%≦%FEV1<80% |
Ⅲ期 | 高度の気流閉塞 | 30%≦%FEV1<50% |
Ⅳ期 | きわめて高度の気流閉塞 | FEV1<30% |
気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVC 70%未満が必須条件。
※努力性肺活量(FVC):思い切り強く息を吐ききった時の全体量
※1秒率(FEV1%、FEV1/FVC):FVCに対するFEV1の割合
※1秒量(FEV1):吐き出しの1秒間に吐いた量
※%FEV1:予測値に対するFEV1の割合
COPDに特徴的な気流閉塞の状態は、胸部X線や血液ガス分析などよりも早期にスパイロ検査でとらえることができます。慢性的な咳やたん、労作時の息切れなどの症状があった場合、風邪や年齢のせいだと思いこまずになるべく早く医療機関で診察を受けることが大切です。
COPDと肺年齢
スパイロ検査の測定結果から、「肺年齢」が算出されます。肺年齢は肺の健康状態を知る指標であり、同性・同年代の方との比較から、今の自分の呼吸機能がどの程度なのかを知ることができます。 また健康な肺であれば身体の成長や老化に合わせて年齢を重ねていきますが、喫煙などにより肺が正常な状態ではなくなると、通常よりも早く肺年齢が上昇します。実年齢と比較して極端に肺年齢が高ければ、COPDなどの疾患を早い段階から疑うことができます。
肺年齢をチェックすることがCOPDの早期発見・早期治療につながりますので、40歳以上で喫煙歴のある方は症状がなくても定期的にスパイロ検査を受け、自分の肺年齢を知っておくことが重要です。
肺年齢と実年齢の差から
COPDなどの疾患をチェック
スパイロ検査の測定結果から、「肺年齢」と「詳細コメント」が記載された用紙がプリントされます。
測定結果は下記のように分類されます。
- 異常なし
肺疾患の可能性は低いです。同性同年代の平均値に比べて数値が良く、今後も定期的な肺機能検査を続けて健康を維持してください。
- 境界領域
- (現時点では異常なし)
同性同年代の平均値に比べ数値がやや悪く、今後も定期的な肺機能検査を続ける必要があります。
- 肺疾患の疑い
- (要精検)
COPDの可能性は低いですが、同性同年代の平均値に比べて数値が悪く、他の肺疾患の疑いがあります。専門医による再検査が必要です。
- COPDの疑い
- (要経過観察/生活改善)
軽症COPDの疑い。現段階で自覚症状は無くても放置すると重症化する恐れがあります。専門医による再検査が必要です。
- COPDの疑い
- (要医療/精検)
中等症以上のCOPDの疑い。専門医による再検査が必須です。適切な治療を早期に行うことで症状を改善し、疾患の進行を抑制する事ができます。
参考文献
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第5版
- 日本呼吸器学会肺年齢普及推進事務局; 肺年齢の利用について "肺年齢コンセプト"仕様書; 2008